木曜日, 7月 16, 2020

「パラサイト」がアカデミー賞作品賞を取ったのは偶然ではない!

  韓国ドラマというと、とにかくエピソード数が多くて、最後には食傷気味になる作品が多かったように思います。大ヒットした「朱蒙」では全81話、日本でも放送されて大好評だった「チャングムの誓い」は全54話、同じく「イ・サン」は全77話、最近では「オクニョ 運命の人」は全51話となっていて、とにかく長大重厚なのです。
  これだけ長いと、シリーズの中半から後半にかけて、ストーリーに整合性を欠くような進行になっていたり、繰り返されるコメディ・プロットも「またかぁ~、早くお話を進めてよ~」てな感じになりがちです。さらに、繰り返される人間関係の軋轢劇も、嫌になってしまいます。激情的な人間関係軋轢劇に、不快感を持つ視聴者も多いと聞きます。大学時代にセミナー内で韓国ドラマについて総合的な感想を聞かせてもらった時も、「韓国ドラマ好きだけど、繰り返される感情表現、特に激情型の表現は嫌い」と答える学生が多かったように思います。
 でも、回数が長くても、ホームドラマ的な「母さんに角が生えた」とか、「拝啓ご両親様」とか、人情に訴えかけてくる、極めて良質なドラマも多いのですが!
 さて、今回取りあげたいのが、オンデマンド時代になり全話で20数回、あるいは20回以下のエピソード数で完結する新感覚の韓国ドラマの素敵な側面です。例として上げたいのは、検察内部の不正を追求していく「秘密の森 (全19話)」(2017)、刑事物で過去に存在し死亡している刑事から無線を使って現在に事件の概要を伝えてくるという面白いストーリー立ての「シグナル」(2016)、やはり刑事物で聴覚が異常に優れている女性刑事と妻を殺された男性刑事が難事件に向かっていくストーリーの「ボイス ~112の奇跡~(全16話)」の3作品です。
 「シグナル」については日本バージョンが2018年に製作され、関西テレビで「シグナル 長期未解決事件捜査班(全10回しリーズ)」としてリメイク版が放送されています。同じく「ボイス」も日本でリメイクされていて、日本では「ボイス~110緊急司令室~」(2019)として日本テレビから放送されました。
 以上三作品について、私は韓国ドラマの製作思想が変わってきていることを感じています。まず、ストーリー構成に無駄がなく、ストーリーの核心に迫っていく段取りがしっかりしていて、以前の韓国ドラマにありがちな冗長性といったものを排除して製作されているように思うからです。
 視聴者に飽きさせず、一種のテンポの良さで、ぐいぐいと最後まで興味を引っ張っていく手法と発想を、韓国ドラマは獲得しつつあるように思うのです。この傾向は、2時間枠の映画にも見受けられると思います。例えば、刑事物で、警察の犯罪組織監視班と武装犯罪グループとの攻防を描いたす「監視者たち」(2013)に見られます。理性的で、合理性のあるストーリーの構成には、正直に言って、韓国のドラマや映画製作者たちの質の高さが示されていると思っています。
 今年のアカデミー賞で「パラサイト」が作品賞に輝きましたが、私はこれは偶然性の出来事ではなく、韓国のドラマや映画製作者たちの「進化」を物語っているものであり、ますます凄い作品が生まれてきそうな予感を持っています。

0 件のコメント:

   アマゾン・プライムのラインアップ構成、なかなか気が利いていると思います。このお盆の時期、見放題のラインアップに、「戦争と人間=3部作品」や「永遠の0」が出てきていましたが、それよりも良かったと思ったのは、「空人」です。エンターテイメント性は希薄ですが、これぞ名画といった作品...