木曜日, 8月 13, 2020

  アマゾン・プライムのラインアップ構成、なかなか気が利いていると思います。このお盆の時期、見放題のラインアップに、「戦争と人間=3部作品」や「永遠の0」が出てきていましたが、それよりも良かったと思ったのは、「空人」です。エンターテイメント性は希薄ですが、これぞ名画といった作品で、時空を超えた人間同士の信頼と約束、そして心のあり方を問いただす素晴らしい作品だと感銘しました。

 戦後75年も経つのに、いまだに自虐的な反戦思想や、戦後の困苦を乗り越えて復興してきたと言った成長戦略の上に立った作品群とは、路線をいつにする作品です。凄く、心に響きます。心に響くという意味では、「この世界の片隅に」に近い発想と感性を感じています。それは、丁度NHKが特集している#あちこちのすずさん・キャンペーンに通じる同じような発想を感じました。

 第2次対戦中に十代だった方々は80歳代後半から90歳前半になっておられて、どんどん生々しい戦争体験を聞く機会を私たちは失い始めている現実を踏まえて歴史の勉強を、歴史解釈を、すべきなのですね。そのようなことを教えてくれる作品でした。

土曜日, 8月 01, 2020

根気が必要な歴史ドラマの一気見!

この一週間、ヴァイキング を題材にしたテレビドラマを立て続けに2作品視聴しました。最初のシリーズは、「ヴァイキング ~海の覇者たち~(シーズン1~5:Amazon Preime)」と「ラスト・キングダム(シーズン1~4:Netflix)」です。「ヴァイキング ~海の覇者たち~」は、日本ではヒストリー・チャネルで公開されていましたが、ケーブルでの連続視聴は、すぐに忘れてしまいます。記憶では2~3回観ていたように思いますが、その時を思い出してみますと(確か2015、2016年頃)、いずれどこかのオンデマンド系で視聴できるようになりそうだから、それまで待ってみようかと、微かにそのように思っていました。現在シーズン6まで制作され、日本でも放送済のようです。

 「ヴァイキング ~海の覇者たち~」は、イングランドへ侵攻した実在のヴァイキング、ラグナル・ロズブロークの冒険と彼の息子たちのサガになっていて、歴史的な出来事を追いかけながら視聴していくと、とても面白い視聴ができて、世界史のお勉強になるドラマです。例えば、連合国家となる基礎を創ったウェセックス王国の成り立ち(一般的には七王国時代)や王国群をまとめ上げてイングランドという統一国家への発想など知ることが出来ます。ドラマの中では、ウェセックス王国国王エグバートとラグナルとの交流やその背景となる歴史などは、全く今まで不案内でしたが、Wikipediaと格闘しつつ視聴していました。また、ヴァイキングのパリ攻略(シテ島攻略戦)などは、映像的にも面白くて、興味が尽きません。

 この時代はカール大帝が築いた神聖ローマ帝国の時代であり、戒律的なキリスト教の教義に縛られている王国運営がしばしばエピソードのネタとなっています。この宗教的な概念の違いがドラマの各所に出てきて、口伝えで伝わってきた北欧の神話や神々の姿に潜む発想と、今や硬直的としか思えないキリスト教儀のせめぎ合いが、現代欧米社会が抱える宗教観の限界を見るような想いに駆られました。ドラマの中では、何度もキリスト教が描くヘブン(天国)とヴァイキング たちが死後に生活するという聖地ヴァルハラが話題になっていますが、日本人の私には、区別がつかず、どちらも同じように思えてしまい、私の心の中では論争になりませんでした。

 一方、「ラスト・キングダム」の主人公ウートレットは領主の息子として、堅固な砦の中で育ちましたが、ヴァイキング撃退に出かけた父親の後を追って、子供ながら戦場へ駆けつけましが、父親は殺され、彼自身はヴァイキング に捕まってしまい、奴隷として育てられます。しかしヴァイキングのリーダーであるラグナルに可愛がられ、息子同然に育てられます。そして、サクソン人でありながらデーン人たちの発想や価値観のもとに行動する青年に育っていき、様々な事件や戦に巻き込まれながら、ウェセックス王アルフレッドに戦闘力・指揮統率力を見込まれて、サクソン側(ウェセックス)として徴用されていきます。この時代設定は、先に記述した「ヴァイキング ~海の覇者たち~」と全く同じ頃(9世紀)です。ウェセックス、マーシアといった、後にイングランドとなる王国が時代背景の核になっており、その意味では中世のヨーロッパやイングランドの歴史を勉強しやすいドラマ比較となりまました。

 両シリーズ合わせて100時間近くの視聴時間になりますが、中弛みなく、真剣視聴できたことは良かったと思います。ストーリーとして飽きさせない構成という観点では、1シーズン10エピソードで設定されている「ラスト・キングダム」の方が時間計画を立てやすくて良いのではないでしょうか。

 「ヴァイキング ~海の覇者たち~」の方はシーズン3までは10エピソード構成ですが、シーズン4、5、6は20エピソード構成です。こちらは根気が入ります。

 根気がいるという意味では、人間同士の交流を描いていく場面でのロジック構成が、具体的には役者たちの会話の中のセリフの中に封じ込められるロジックが、かなり難しいのです。でも、前に何らかの作品で感じたことに似ていると思い、気になって調べてみました。結果は、ずばり、原案者であり脚本も担当している作家さんが、「THE TUDORS~背徳の王冠~」の製作総指揮をとったマイケル・ハーストさんだったのです。作品作りから何かを感じて調べて、「やはり!」という発見で、この数年のメディア・ウォッチャー体験が生きてきた感じで、嬉しく思いました。

日曜日, 7月 26, 2020

Netflixの食関連のドキュメンタリーは、マジ、すごい!!



 私は日々オンデマンド系を楽しんでおり、集中的に感想文を載せてみようと思うようになったのですが、この楽しみの中でも、一番期待しているのが、お料理を紹介する番組です。特に、Netflixのドキュメンタリー・シリーズには感銘しています。
 そのシリーズとは、「CHEF’S TABLE」です。現在6シーズン目が視聴できます。また、フランス編だけ独立して1シーズン4エピソードあります。このシリーズでは、現在世界のレストラン・シーンで革新的に活躍する全世界のシェフの生き様と、そのお料理が、実にスタイリッシュに紹介されていて、内容の濃いドキュメンタリーです。そして、いつしか私は、世界のシェフたちの発想の中に和食からの影響がないか、それを確かめながら視聴するようになっていました。
 彼らがインタビューで喋る言葉の中に、彼らがスタッフや食材提供者たちとの会話の中に、和食の影がないかどうかを、探りながら観賞する習慣が、自然とついてしまいました。会話から聞き取った和食のキーワードの数々、例えば、「旨味」、「出汁」、お魚の「生き締め」、「刺身」、「揚げ物」、「蒸し物」、「焼き物」などなど。食材でも、「神戸ビーフ」、「Japanese cucumber」、「しいたけ」、「ハマチ」、「カンパチ」、「熊本産・オイスター」、「Uni(ウニ)」などなど。和食の発想、特に食材の仕込みの技術論だけじゃなくて、日本食材そのものが世界のレストラン・シーンに進出している姿を、これらのドキュメンタリーから知ることができました。改めて、和食の影響力の大きさに感銘しています。
 とにかく、Netflix の食関連番組はどのオンデマンド系の追従を許さないほど、充実しています。それもほとんどがNetflix Orignalなのですから、驚きです。「CHEF’S TABLE」以外にも、食紀行ドキュメンタリーとしては、「腹ぺこフィルのグルメ旅」がお勧めです。全3シーズン、いや、全3品?? Netflix のインデックスをそのまま使用して記述しましたが、ミスター・ビーンそっくりのフィルの紹介する世界各地の料理に、そしてその紹介のやり方が大好きで、この方の新シリーズを常に待ち望んでいます。また、プロ・シェフ達の対決番組「ファイナル・テーブル」も秀逸です。このようにNetflixでは、食関連の優秀な番組には、枚挙にいとまがないのです。
 最近の番組では、「ストリート・グルメを求めて(2シーズンあり、シーズン1はアジア編、シーズン2は南米編」が最も面白い内容を教えてくれています。すごく感銘したのは、ある紹介者がインタビューの中で言っていた格言です。「その国の伝統的な食文化は、ストリート・グルメから出てくる」と言う言葉で、これは日本のある料亭の女将の発言なのですが、核心をついており、唸ってしまいました。確かに、天ぷらも、うなぎも、うどん・蕎麦も、ストリート・グルメだったことを思い起こして、驚いたものです。
 確かに日本の番組でも、井之頭五郎(松重豊)が一人飯体験者となる「孤独のグルメ」と言うすごい番組がありますが、エンターテイメント性が強くて、実際の料理人が登場しないので、その点がいつも不満です。しかし、以上紹介したNetflixの食関連ドキュメンタリーは、調理人が主役となる構成で、本当に面白いのです。

金曜日, 7月 24, 2020

三浦春馬さんのでている映画やドラマについて


最近、芸能ニュースで大きく取り上げられている三浦春馬さんの自殺、様々な憶測記事が溢れています。日本の男性俳優については、私はほとんどこだわりがなく、今まであまり気にしたことがないのですが、一点だけ、この俳優さんの名前を、意識して覚えていたことがありました。
 それは、京都大学名誉教授でお猿の研究者として有名な河合雅雄先生の自伝的小説「少年動物誌」が映画化された時、河合雅雄先生の役を彼が演じていたことを記憶していたからです。映画のタイトルは「森の学校」(2002年7月公開)。学校も休みがちな病弱な少年期を過ごしていた雅雄少年が、裏庭に小さな動物園を作り、故郷丹波篠山の自然の中で命について、家族や人々との交流について体験的に学んでいく姿を映像化した作品です。そして雅雄少年を演じた三浦春馬さんは、当時11歳くらいだったと思います。
 映画としての「森の学校」はそこそこの評価を受けていますが、どうも、大々的に興行化することもなく、現在としては作品群の中に埋もれてしまっている感があります。しかし一度だけ、雅雄先生本人が三浦さんについて言及していたことを思い出しました。朧げながらですが、主役の雅雄少年(三浦春馬少年)が「キラキラ輝いていて、カッコ良すぎるんじゃないか」と思われたそうです。実は、この作品「森の学校」、見たい見たいと思い続けていますが、いまだ視聴できていません。残念でたまりません。DVDにもなっていないようです。
 そこで彼の出演作を先週末から意識的に探して、そして視聴してみました。つまり大人になった三浦春馬さんの作品を知ってみようと思いました。映画は「こんな夜中にバナナかよ」、TVドラマは「陽はまた昇る」の二作品です。確かにかっこいい役者さんです。そして、悩みの表情が際立って真に迫っている感想を覚えました。でも、自殺したことを知っている環境下での視聴ですから、自分の感想はあまり信用できないとは、思っていますが。
 彼の項目を紹介しているWikipediaを覗いても、「森の学校」に雅雄少年役で出演していた件は、未掲載になっています。

火曜日, 7月 21, 2020

トランプ=ヒットラーをイメージ付ける「華氏119(Fahrenheit 11/9)」

マイケル・ムーア監督作品「華氏119(Fahrenheit 11/9)」を真面目に、集中してみました。これほどわかりやすく現アメリカの民主主義が腐敗し後戻りできないほど崩壊していることを知らしめてくれる作品はありませんね。日本側からだと断面的な現象としてしか理解できなかったことが、少しづつわかり始めて気がしました。
 例えば、2016年に起きたミシガン州フリント市の水道水汚染問題、2018年3月に全米規模で抗議行動が選挙権を持たない10代世代によって組織され、各地でデモ抗議活動がおきた銃社会・銃規制に対する高校生たちのデモ(このデモ活動は反ベトナム戦争デモ以上の参加数だったと言われておます)など、初めて理解できた事案もありました。銃乱射事件という突発性の事件のショックウェーブだけに晒されていた自分の不明を恥じたい気持ちになります。
 2016年11月9日にトランプ大統領は誕生したのですが、その選挙に、アメリカ有権者の約半分は投票に行っていないのですから、トランプの暴走を許してしまった最たる責任は、アメリカ国人そのものだという点も主張されていて、この監督、すごく賢いメディア戦略家でもある側面を発見したように思います。単なる突撃取材のジャーナリストという側面ばかりが強調されてきましたが、違うのです。代替ジャーナリズムの旗手のように思えてきました。
 今世界では、ロシアのプーチンや中国の習近平など、絶対権力を長期間保持できるように国家制度、つまり憲法法律を絶対権力を許す方向で変更し、権力の長期収奪を可能にする目論みが罷り通り、実際に手に入れている傾向にあります。そのような傾向の中で、トランプも再選され続けることを目論んでいましたが、コロナ禍、コロナウィルスのパンデミックによって、形勢がくづれようとしているようにも思います。しかし、トランプが情報を操作し、メディアを手中に治めて、やりたい放題の権力奪取を撮り続けてきたツケは、全世界レベルで膨大に膨れ上がっているように思えてならないのです。
 ジョージ・ブッシュ大統領下のアメリカの間違い、特にイラク戦争の欺瞞を描き出した「華氏911」よりも深刻に、監督自身のモノローグが最後を締めていますが、「アメリカのこれからしか、信じられない」、つまりアメリカはとんでもなく認め難い失敗により、目を背けたくなる混迷の過去を延々と気付き上げてきており、未来にしか望みようがないという、切なる感想には驚かされました。
 映像処理的には、笑えないのですが、トランプの演説が見事にヒットラーの演説映像に嵌っていて、つまり音声はトランプ、映像はヒットラーという映像テクニックが、悲しいほどシンクロしているのです。これには参りました。本当に凄い監督です。これほど、トランプ=ヒットラーをイメージ付けたビジュアルは、過去に見たことがありません。是非、多くの人々に、特に若い世代にみてもらいたいドキュメンタリー映画です。

金曜日, 7月 17, 2020

女優エリザベス・マクガヴァンについて(Once Upon a Time in Great Britain)

 私には、かなり昔から「これぞ、映画」と評価してやまない作品があります。もう30数年あまり、この評価が変わらない作品で、それこそ100回以上は繰り返し観ている作品です。それは、ロバート・デニーロが主役を演じた「Once Upon a Time in America」(1984 )です。尺が3時間以上あり、途中でインターミッションがあるような、今となっては古風なスタイルの映画ですが、今でもこの映画に嵌っています。
 今回、この「Once Upon a Time…」を改めて調べてみると、アメリカ映画産業の弱点や商業主義による弊害が浮かんできます。当初、初回劇場公開版では144分でした。これはストーリーの難解さを考慮したアメリカの配給会社からの圧力で、大幅に短縮されたからです。ところが、劇場再公開版では205分に再編集され、さらに完全版では229分になり、これぞディレクターズ・カット版(エクステンデット版)では251分になっています。
 カットされた理由としては、過去・現在を行き来しつつ物語の核心に迫っていくロジック構成を、アメリカ人のプロモーターたちにはまどろっこしくて、忍耐が求められる観賞姿勢を嫌ったからに他なりません。しかし、世界への配給からは、特に日本やヨーロッパ諸国での評価は、この長さに関係なく良好だったそうです。監督のセルジオ・レオーネ(1929-1989)自身が編集し直した完全版(3時間49分)を再びアメリカ国内で劇場再公開すると、今度はギャング映画の最高傑作を讃えられるほどの高評価を受けたそうです。切れた独特のアクション・ムービー作りで有名なタランティーノ監督も、本作品のファンであることを公言しています。彼の最近作「Once Upon a Time in Hollywood」(2019)のタイトリングを見ても、その影響力は理解できそうですね!
 また、このような好評を寄せられるようになった一因には、当時出始めていたVHSビデオによる個別試聴が進んだことが再評価に大きく貢献していたとの論説を読んだ記憶があります。1980年代後半から1990年代初頭にかけてのメディア状況を反映していますね!
 付属的な話題としては、「Once Upon a Time in America」の音楽を担当したエンリオ・モリコーネ。セルジオ・レオーネ監督と一緒にマカロニ・ウエスタンの名作「夕陽のガンマン・シリーズ」などで有名になり、「ニュー・シネマ・パラダイス」(1989)で世界的な評価をえた作曲家ですが、つい先日お亡くなりになっています(2020年7月6日没、91歳)私は、南米の縦笛ケーナのテーマのメロディーが堪らなく好きでした。
 さて、今回注目するのは、「Once Upon a Time…」の中で主役のヌードル(ロバート・デニーロ)の憧れの恋人で、後に親友のマックス(ジェームズ・ウッズ)に密かに寝取られてしまいギャングの妻になるデボラ役(エリザベス・マクガヴァン)の女優についてです。役者として力量があることは誰にでも理解できる存在ですが、不運なことに良作に恵まれず歳を重ねていたようです。
 刑務所を出所してきたヌードルがデボラの兄・ファット・モーが経営するクラブ(当時の設定としては不法に酒類や女性を提供する店で、実際のスポンサーであるマックスたちのギャングのオフィスを兼ねている)での再会シーン、ロングアイランド・ビーチのレストランを貸し切り、食事して、ダンスして、浜辺に毛布を広げて告白するシーン、リムジンの中で抑えがたい感情に駆られてレイプするシーン、そして、この映画の中で最も美しいシーンであるセントラル・ステーションから西部カルフォルニアへ旅立つデボラを見送りに行くシーン、蒸気機関車が吐き出す白い蒸気の中に浮かぶ二人のそれぞれの表情など、私の脳裏には各シーンが、その時のセリフまで、見事に蘇ります。
 当時のエリザベス・マクガヴァンは、ほっぺがふっくらとした中に目鼻立ちがキリリとした美しさがありました。その表情が、他の作品の中ではどうなのか、長い間、視聴することを熱望していましたが、なかなかかないませんでした。
 ようやく彼女と再会できたのは、NHKで連続放送された「ダウントン・アビー 華麗なる英国貴族の館(Downton Abbey)」でした。このドラマでは英国貴族のクローリー家を中心に、時代的にはタイタニック号沈没のあった1912年から始まり、後半では第1次世界大戦の時期まで続きます。このドラマの中心であるクローリー家の中心であるロバート・クローリー(第7代グラッサム伯爵)の婦人・コーラ・クローリー(第7代グラッサム伯爵夫人)役をエリザベス・マクガヴァンが務めていたのです。このドラマを視聴し始めて、一瞬で彼女だとわかりましたが、齢を重ね風雪を凌いできた風情があり、とても嵌まり役だと思いました。
 役者も歳をとり、ファンだった我々も歳を重ねていきます。「永遠のファン」という言葉がありますが、過去の姿に憧れるのではなく、役者の成長とともにファンも成長し、感性も洗練されていき、知恵と理解力も深まっていくのですが、そのようなファンの側の変節をも飲み込んで、ファンで居続けることができるのは、やはり、役者も成長し、時代の中で適役をえて、常にファンの嗜好を充実させてこそ、役者なのだと思うのです。エリザベス・マクガヴァンの伯爵夫人役、なかなかのものだと思っています。

木曜日, 7月 16, 2020

「パラサイト」がアカデミー賞作品賞を取ったのは偶然ではない!

  韓国ドラマというと、とにかくエピソード数が多くて、最後には食傷気味になる作品が多かったように思います。大ヒットした「朱蒙」では全81話、日本でも放送されて大好評だった「チャングムの誓い」は全54話、同じく「イ・サン」は全77話、最近では「オクニョ 運命の人」は全51話となっていて、とにかく長大重厚なのです。
  これだけ長いと、シリーズの中半から後半にかけて、ストーリーに整合性を欠くような進行になっていたり、繰り返されるコメディ・プロットも「またかぁ~、早くお話を進めてよ~」てな感じになりがちです。さらに、繰り返される人間関係の軋轢劇も、嫌になってしまいます。激情的な人間関係軋轢劇に、不快感を持つ視聴者も多いと聞きます。大学時代にセミナー内で韓国ドラマについて総合的な感想を聞かせてもらった時も、「韓国ドラマ好きだけど、繰り返される感情表現、特に激情型の表現は嫌い」と答える学生が多かったように思います。
 でも、回数が長くても、ホームドラマ的な「母さんに角が生えた」とか、「拝啓ご両親様」とか、人情に訴えかけてくる、極めて良質なドラマも多いのですが!
 さて、今回取りあげたいのが、オンデマンド時代になり全話で20数回、あるいは20回以下のエピソード数で完結する新感覚の韓国ドラマの素敵な側面です。例として上げたいのは、検察内部の不正を追求していく「秘密の森 (全19話)」(2017)、刑事物で過去に存在し死亡している刑事から無線を使って現在に事件の概要を伝えてくるという面白いストーリー立ての「シグナル」(2016)、やはり刑事物で聴覚が異常に優れている女性刑事と妻を殺された男性刑事が難事件に向かっていくストーリーの「ボイス ~112の奇跡~(全16話)」の3作品です。
 「シグナル」については日本バージョンが2018年に製作され、関西テレビで「シグナル 長期未解決事件捜査班(全10回しリーズ)」としてリメイク版が放送されています。同じく「ボイス」も日本でリメイクされていて、日本では「ボイス~110緊急司令室~」(2019)として日本テレビから放送されました。
 以上三作品について、私は韓国ドラマの製作思想が変わってきていることを感じています。まず、ストーリー構成に無駄がなく、ストーリーの核心に迫っていく段取りがしっかりしていて、以前の韓国ドラマにありがちな冗長性といったものを排除して製作されているように思うからです。
 視聴者に飽きさせず、一種のテンポの良さで、ぐいぐいと最後まで興味を引っ張っていく手法と発想を、韓国ドラマは獲得しつつあるように思うのです。この傾向は、2時間枠の映画にも見受けられると思います。例えば、刑事物で、警察の犯罪組織監視班と武装犯罪グループとの攻防を描いたす「監視者たち」(2013)に見られます。理性的で、合理性のあるストーリーの構成には、正直に言って、韓国のドラマや映画製作者たちの質の高さが示されていると思っています。
 今年のアカデミー賞で「パラサイト」が作品賞に輝きましたが、私はこれは偶然性の出来事ではなく、韓国のドラマや映画製作者たちの「進化」を物語っているものであり、ますます凄い作品が生まれてきそうな予感を持っています。

火曜日, 7月 14, 2020

上質なドラマシリーズは20年の年月が過ぎても、面白い!

日曜日の夕方から昨晩にかけて、イギリスで製作された海洋ドラマ・シリーズを連続視聴しました。邦題「ホーンブロー 海の勇者」(原題: Hornblower)です。原作はセシル・スコット・フォレスターのホーンブローシリーズとのことです(Wikipedia)。
  まず第一に、シリーズものではありますが、1エピソード(1話)の尺が90分程度に編集されており、ストーリーに完結感のある編集になっている点に好感を持ちました。また、たっぷりに挿入されている帆船、それも当時のイギリス海軍の軍艦の作りにも惹きつけられるものを感じました。帆船は、とにかく魅力たっぷりですね。(個人的には、この時代の大型帆船に乗船しての外洋旅に憧れています)
 時代は、18世紀後半から19世紀初頭のイギリスとヨーロッパ大陸側と情勢が背景になっています。シリーズ後半のエピソードでは、ナポレオンの弟が出てきますので、正確には、19世紀初頭だと思います。主人公のホレイショ・ホーンブロワーの英雄譚と一言で言ってしまえるのですが、ドラマが作られてからほぼ20年経った現在、このシリーズを見ていると、いろいろ気がつくことがありました。
 一言では言えない面もありますが、「じっくり構えて、本格的に創る」とでも言えそうな、製作者たちの根性を感じるのです。この感覚は、図らずしも似ているのですが、NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の枠で現在取り組まれている過去の大河ドラマの名場面を振り返る番組で感じる、あれに似ていると思いました。小さなエピソードでも丹念に、後々生きてくるお話として疎かにしないで描ききる精神に溢れているように感じました。
 この作品の背景を調べていて気がついた面白いことは、主人公の名前・ホレイショ・ホーンブローの「ホレイショ」についてです。ナイルの海戦で有名なイギリスの提督の名前が「ホレーショ・ネルソン(Horatio Nelson)」。ネルソン信奉者が多いイギリスでの読者、そして放送を前提としたストーリーらしい設定に、改めて作家さんの発想にも拍手したい感じです。
 なお、ラッセル・クローが艦長として活躍する映画「Master and Commander」(2003年公開)も同じ時代設定になっていて、制作された年代が、2001年の911同時テロ前後という点も、面白い付合があるように思います。
 まだ地上波のデジタル放送が確立していない時代の画面比率も4:3の時代のドラマですが、本格的に制作されたドラマは時代を重ねて視聴できる価値があるんですね。とても楽しめました。

土曜日, 7月 11, 2020

「グレイハウンド」は現代版の「眼下の敵」

 昨晩は、トム・ハンクス脚本・主演の「グレイハウンド」を観ました。第2次対戦中のアメリカから欧州への支援物資を運ぶ船団を護衛する駆逐艦(グレイハウンド)の船長(トム・ハンクス)の物語です。
 初回の視聴での感想としては、後半で繰り広げられる駆逐艦VS潜水艦・Uボート(群狼作戦として知られています。Uボート複数が群れをなして輸送船団を攻撃する作戦)の緊迫した戦いが、ドラマの主要構成になっていました。そのシーンを見て、これはまるでネルソン提督時代の接近戦に近い状況だったのだと分かったことです。勿論、脚色された演出部分があるのでしょうが、Uボートを追い詰めて浮上させ、艦砲射撃で遣り合うシーンには驚きました。
 潜水艦を追いかけるという点では、トム・クランシー原作の「レッド・オクトーバー」(The Hunt for Red October)がよく知られています。しかし、これは架空の設定で現実味に乏しいのですが、上質のエンターテイメント作品だったと思います。
 そして、最も有名な潜水艦映画としてはドイツで製作された、その名もズバリ、「Uボート」(Das Boot/The Boat)でしょう! この映画は1981年に、まだ西ドイツ時代に製作されています。実物大のレプリカを造り、その中での撮影は素晴らしいものがありました。潜水艦の館内映像として、この映画を上回る作品は、以後、出ていないように思います。私は、この映画も繰り返し繰り返し観ていますが、飽きるどころか毎回新鮮な発見があって、いまだに映画というモノを学ばせてもらっている感じがします。
 ハリソン・フォードがロシアの原子力潜水艦の艦長役を務めた「K-19」(The Widowmaker)も、確かに味わい深い作品ですが、どこか暗さが漂っていて、今一つ好きになれませんでした。同じく、日本映画で、最近製作された「ローレライ」も、同じように突き抜けたところがなく、並評価になってしまいますね!
 古いところでは、邦題「眼下の敵」(The Enemy Below)は、何度見ても見応えのある作品です。アメリカの駆逐艦 VS Uボートという点では、「グレイハウンド」と同じです。アメリカ海軍駆逐艦 の艦長マレル(ロバート・ミッチャム)とUボートの艦長シュトルベルク(クルト・ユルゲンス)の知恵と勇気を賭けた戦いには、実に引き込まれてしまいます。潜水艦映画の模範となる重要な作品であり、以後の製作者たちが一様にこの作品を意識してきたことは明らかです。
 「グレイハウンド」を観ながら、この大西洋におけるUボートと輸送船団の戦いの奥に潜んでいたストーリーにも、連想的にメディア・ウォッチャーの意識がくすぐられます。それはドイツの暗号製作機「エニグマ」を巡る解読劇、その解読劇を軸に据えたドラマと映画の数々です。
 「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」では、コンピューターの原型となるチーリング・マシーンの製作プロセスを追いながら、彼の秘密が暴露されていく訳ですが、当時の主眼としてはナチス・ドイツの暗号を破るための戦いであり、その鍵となる暗号機(エニグマ)とコード・ブックは、大西洋で沈没寸前のUボートからイギリス海軍に奪取されたモノだったとの事実が戦後50年以上たった近年になって、次々と公開され始めています。エニグマは破られていた事実をイギリスは長年に渡って秘密にしてきたのです。この暗号解読を専門的に行なっていたのが、イギリスのの通信傍受機関、政府通信本部(GCHQ)ですが、そこは「ブレッチリー・パーク」として知られています。
 女優ケイト・ウィンスロットが出演した、その名もズバリ「エニグマ」は、ドイツの暗号解読に関わるストーリーであり、現場は「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」と同じく、「ブレッチリー・パーク」です。テレビドラマとしては、「THE BLETCHLEY CIRCLE」。Netflixでは、「ブレッチリー・サークル」として配信され、現在は、Amazon Preimeでは、「暗号探偵クラブ」として配信中となっています。
 イギリスはブレッチリー・パークでの暗号解読の事実を長年に渡って秘密にしてきましたが、今後も情報開示により、半世紀以上前の世界史に繋がるエピソードがたくさん出てくると思われています。

金曜日, 7月 10, 2020

トム・ハンクス脚本・主演のアップル・オリジナル映画作品の登場「グレイハウンド」

 今日は、アマゾン・オリジナル、ネットフリックス・オリジナル、アップル・オリジナルが公開される時代について、少々触れてみたいと思います。
 テレビ・ドラマや映画といったエンターティメント系の製作スタイル、特に主体となる母体が、GAFAといったIT時代の経済的なドライブ・フォースにシフトしてきています。それらの中には、例えばアメリカの放送メディアの祭典であるエミー賞や映画の祭典として全世界から毎年注目されているアカデミー賞にノミネートされ、受賞する作品が、近年続出しています。
 例えばエミー賞では、過去に、「HOMELAND」(Showtime)、「ハウス・オブ・ガード~欲望の階段~」(Netflix)、「The Crown」(Netflix)が受賞しています。2000年代までは、CBS、ABC、NBCといったアメリカの放送メディア主体の作品が受賞することが多かったのですが、2010年代以降、電波媒体(CBS、ABC、NBC)からの受賞は影を消し、代わりにケーブル系かインターネット配信系がどんどん存在感を示し始めています。
 この流れを見ていると、第一に、ドラマ制作のキーポイントは資金力とクリエーターを縦横に集められる情報力にかかっているように思われるのです。そして日本でも、アマゾン・オリジナル、ネットフリックス・オリジナルが続々と誕生し始めています。
   ・アマゾン・オリジナル:「クレヨンしんちゃん 外伝」、「東京アリス」、「しろときいろ~ハワイと私のパンケーキ物語~」 etc.
   ・ネットフリックス・オリジナル:「アンダーウエア」、「深夜食堂」、「火花」、「100万円の女たち」 etc.
 日本だけではなく、この流れはアジアの各国に広まっています。その最たる恩恵を受けているが、韓国ドラマなのではないでしょうか。韓国ドラマの最近の製作傾向については、改めて記事を起こしたいと思っています。
 今日話題にしたかったのは、トム・ハンクスが脚本を担当し、自ら主演を務めるアップル・オリジナル映画作品「グレイハウンド」が、今日からアップルTVで視聴可能になることです。映画ドット・コムによると、この春先劇場公開が予定されていましたが、コロナ禍の影響で劇場公開が中止になり、その後、配給会社や配信会社間で争奪戦が繰り広げられたようですが、アップルが高額の契約金を投じて配信権をえたようです。ですから、1ヶ月だけの加入費と500円前後のレンタル費を費やしてでも、見てみたいと思っています。

木曜日, 7月 09, 2020

俳優・上川隆也の「遺留捜査シリーズ」に嵌ってます

 今回は、俳優・上川隆也に拘ってみようと思います。この俳優を認識し始めたのは、出世作であるNHKドラマ「大地の子」に主人公・陸一心を演じた時でした。当時30歳前後の新人だったと思うのですが、とても新鮮で誠実な演技だったと記憶しています。
 その後、同じくNHKの大河ドラマ「功名が辻」の山内一豊役を主演し、メジャーな役者としての地位を確立したように思いました。その後、民放各社のドラマに出演していましたが、あまりこれといった注目は持たずにいましたが、オンデマンド時代になり、東京のキー局制作のドラマやWOWOWのドラマWがネット経由で視聴可能になり、「マークスの山」(WOWOW)、「レディ・ジョーカー」(WOWOW)、そして私が最も面白くて全シリーズを視聴した「遺留捜査シリーズ」(テレビ朝日)の糸村聡役に嵌ってしまいました。
 風貌からは、饒舌とは縁遠くて、寡黙で誠実な雰囲気を醸し出しながら、実は軽妙にコメディ・タッチの突っ込み上手な役回りをこなしており、すっかいファンになってしましました。「遺留捜査シリーズ」では事件の解決が迫る後半の山場で、「僕に3分間だけください」との決め台詞、視聴者は安心して事件の核心の説明を聞くことになるのですが、このパターンが、何度出てきても、嫌味がないのです。好きな理由だと思います。白いスニーカーに肩下げバック、現場に臨場するとネクタイを外してと言ったパターン化した演技も、何故か、彼が行うと自然な動きに見えてしまうのです。科捜研の村木との毎回の押し問答も、普通に面白いのです。普通、パターン化したコメディ部分は、他のドラマでは食傷気味になるのですが、彼の場合は、常に面白いのです。
 逆に、あまり好ましくなくて、無理しているなぁ~と思うのは、「執事 西園寺の名推理シリーズ」の西園寺一役はいただけません。無理して演技しているのがそこ彼処に見受けられて、このシリーズは途中棄権しました。また、2時間前後の時間軸で最後までストーリーが完結する映画では、彼の良さが活かし切れていない印象があります。最近見た「二流小説家~シリアリスト~」での演技も、映画俳優とは言いきれず、シリーズ物のテレビドラマが彼にはぴったりの印象が強いです。
 彼にはドラマWのような回数の少ないしリーズ・ドラマの主役が最適なのではないかと思います。その意味では、2016年の「沈まぬ太陽」(WOWOW)NO恩地元役は彼に合った作ヒントは思いますが、少し不満が残ります。ここまで分席してきて言えることは、私は「遺留捜査シリーズ」の糸村君が、どうも好きで、憧れているようです。

火曜日, 7月 07, 2020

注目したい二つのアメリカン・ドラマ

  アメリカ大統領の話題を書いたついでに、アメリカのテレビドラマで気になった二つの作品について書いてみます。どちらもアマゾン・プライムで知った作品で、一つはアマゾン・オリジナル作品で日本名は「高い城の男(THE MAN IN THE HIGH CASTLE)」です。
 もう一つは、アメリカのケーブルチャネルの一つで、高品質の作品作りでは定評のあるHBO(Home Box Office)作品の「プロット・アゲンスト・アメリカ(THE PLOT AGAINST AMERICA)」です。この作品は、アメリカの現代作家として有名なフイリップ・ロスの歴史改変小説をテレビ・ドラマ化しています。ストリーの概略としては、1940年代の大統領選から話が始まります。半ユダヤ主義者で親ナチズムのリンドバーグ(大西洋単独横断飛行の英雄)がルーズベルトに打ち勝ち、大統領になるというモメントからストーリーが動いていきます。ニュージャージー州ニューアーク市に住むジューイッシュ家族を中心に、アメリカがナチズム化していく様子を描いています。日本では、スターチャネルが放送しており、アマゾン・プライムも期間限定で配信しています。
 歴史改変ストーリーということでは、「高い城の男」も同じで、こちらは、ナチス・ドイツと日本が先の大戦で勝利し、ドイツと日本で、アメリカを二分割統治するという架空のお話です。東側半分をナチス・ドイツが、西側半分を日本が統治するという荒唐無稽なお話ですが、現在から半世紀以上前の時代設の中では、映像を観る限り、妙に現実感が漂っていて、見応えがありました。映画「グラディエーター」の監督として有名なリドリー・スコットがこのアマゾン・オリジナルのシリーズの製作総指揮にあたっています。
 さて、私がメディア・ウォッチャーとして注目している点は二つあります。一つは、ナチズムとその結果残された歴史というのは、欧米にあっては、当分の間、小説や映画やテレビ・ドラマにおいて、ストーリー構成を構築しやすくて、かつ、メッセージ性を託しやすいテーマだという点です。特に、「メッセージ性を託しやすいテーマ」という観点から、現在放送が進行中の「プロット・アゲンスト・アメリカ」を、特に注目しています。自国民と世界を分断の極地に追いやろうとしてきたトランプが大統領再戦を控えるこの時期に、ナチズムとアメリカ民主主義の理想を逸脱しまくっている現アメリカの中で放送されるという意義は、とても大きいと思うからです。それは、リンドバーグ大統領がドラマの中で打ち出してくる政策が、即トランプをダイレクトにイメージさせるからです。例えば、人種隔離政策など。アメリカの混迷と苦悩は深いですね!
 PS: オンデマンド系でHBO作品を体験できることは、本当にありがたいと感じています。トム・ハンクスとスティーブン・スピルバーグが共同プロデューサーとして関わった「バンド・オブ・ブラザース(Band of Brothers)」や、「エンジェルス・イン・アメリカ」、「ゲーム・オブ・スローンズ」など、アメリカの良心的な作品が数多くあり、私はファンですね。

月曜日, 7月 06, 2020

トランプも観るべし!キーン大統領の決断!!

 先週、Netflixで最近配信されるようになった「HOMELAND」のシーズン7を一気見しました。主役のCIAの女性エージェント・キャリーの双極性障害による、事象の極端化、深刻化は相変わらずのですが、時期が時期だけに注目したストーリーとテーマがあったように思い、書き留めておきたいと思います。
 それは、このシリーズ中では大統領になっている女性のキーン大統領が、シリーズ後半のエピソードで一旦は閣僚たちよる弾劾にあい、失脚しますが、キャリーとソールたちの特殊工作チームが敵地ロシアで作戦を実施し、証人を奪還し、アメリカに連れ帰って公聴会でロシアがアメリカ政権、特にホワイトハウスを混乱に導き、政権の弱体化を工作した事実を明らかにすることで、大統領は弾劾の窮地から復活し、再度大統領に返り咲きます。注目したのは、その後のことです。
 一旦は大統領職に復帰しますが、復帰直後のアメリカ国民へのテレビ放送で、スピーチ・ライターの用意した原稿ではなく、自ら、自分の考えを滔々と訴え始めるのです。その内容とは、「政権の歪みに付け込んで、政権弱体化を狙ったロシアの企みは排除した。しかし、政権内、議会との関係や国民の間に亀裂と分断を作り出した責任は私の政権運営にあり、責任は自分にある。したがって、自ら職を辞し、副大統領に大統領職を禅譲する」と、一方的に発表するのです。注目点は、分断とアメリカの国是である民主主義の基本理念を無視した政権運営を反省し、潔く、自ら退く点なのです。
 さて、トランプ大統領はこのドラマ見ていないとは思いますが、イメージ戦略を担当するバッアップ部隊は当然モニターしているはずですし、このプロットを用意した製作陣の根性を凄いと思うのです。
 その意味では、「the good fight」の中でのエピソードに、同じような製作者の根性を感じたエピソードがありました。「the good wife」のスピンオフ作品で、弁護士事務所の女性社長を中心に話は進みますが、盛んに現政権のエピソードが盛り込まれています。企業買収に伴うホワイトハウスの介入や政権に敵対すると思われる会社や個人への盗聴、そして警察をはじめ、CIAやNSAをはじめとするあらゆる国家機関による妨害工作が、次から次へと盛り込まれています。明らかに反トランプなのです。
 そんなエピソードの中でも一番強烈なのは、トランプがかつてロシアのホテルで女性たちを部屋に連れ込み、ベッドでの放尿シーンを撮影されていたと言う事案でしょう。このエピソードを見たとき、アメリカはジャーナリズムだけじゃなくて、エンターテイメント作家、製作陣も、本気になっているなと感じました。この事実を証明する写真の存在があり、それを巡って、民主党側との取引に出ていくのですが、その結末も、現アメリカを象徴していたように思います。結局、強権的、独裁的な政権のやり方に恐れをなしている民主党側が手を引くのです。あまりにも危険極まりないとして。今、アメリカには、トランプをヒトラーに擬える人々が、実は大勢いるんですね。

アマゾン・プライム・オリジナル作品「しろときいろ」

 アマゾン・プライム・オリジナル作品で、日本のドラマ「しろときいろ」を観ました。ドラマも、いろいろありますが、最近の傾向として、刑事物であれ、弁護士物であれ、青春物であれ、なんかストーリーとその折々のイベントを描くにあたって、パターン化していると、常々思っています。だから視聴者は、ある予定調和をイメージしながら視聴しているのではないでしょうか。そこには製作者側の、こうすれば視聴者は一定の評価と反応を示してくれるはずだと言う、一種の経験則を忠実に履行しているように思われるのです。
 ところが、この「しろときいろ」については、制作姿勢と演出法に、何か新鮮なモノを感じました。実話があり、その制約もあるのでしょうが、丁寧に、誠実にドラマ作りをしている姿勢が感じられて、とても好感を持ちました。オープニング・タイトルで主演の川口春奈さんが街中を疾走するシーンがありますが、その姿、爽やかで、フレッシュ感に溢れており、それだけ見ても、わたしは充分に楽しめたのです。連続テレビ小説の「あまちゃん」や「なつぞら」を視聴していた感覚に近いものを感じており、お勧めです!
 ただ、一つ惜しいな~と思うことは、ハワイ独特の自然の環境の美しさや南国の街角の風情などがもう少しシーンの中に登場してもしかった。その意味では、アメリカドラマの「HAWAII50」は、凄かった印象が強いですね!

   アマゾン・プライムのラインアップ構成、なかなか気が利いていると思います。このお盆の時期、見放題のラインアップに、「戦争と人間=3部作品」や「永遠の0」が出てきていましたが、それよりも良かったと思ったのは、「空人」です。エンターテイメント性は希薄ですが、これぞ名画といった作品...