火曜日, 7月 21, 2020

トランプ=ヒットラーをイメージ付ける「華氏119(Fahrenheit 11/9)」

マイケル・ムーア監督作品「華氏119(Fahrenheit 11/9)」を真面目に、集中してみました。これほどわかりやすく現アメリカの民主主義が腐敗し後戻りできないほど崩壊していることを知らしめてくれる作品はありませんね。日本側からだと断面的な現象としてしか理解できなかったことが、少しづつわかり始めて気がしました。
 例えば、2016年に起きたミシガン州フリント市の水道水汚染問題、2018年3月に全米規模で抗議行動が選挙権を持たない10代世代によって組織され、各地でデモ抗議活動がおきた銃社会・銃規制に対する高校生たちのデモ(このデモ活動は反ベトナム戦争デモ以上の参加数だったと言われておます)など、初めて理解できた事案もありました。銃乱射事件という突発性の事件のショックウェーブだけに晒されていた自分の不明を恥じたい気持ちになります。
 2016年11月9日にトランプ大統領は誕生したのですが、その選挙に、アメリカ有権者の約半分は投票に行っていないのですから、トランプの暴走を許してしまった最たる責任は、アメリカ国人そのものだという点も主張されていて、この監督、すごく賢いメディア戦略家でもある側面を発見したように思います。単なる突撃取材のジャーナリストという側面ばかりが強調されてきましたが、違うのです。代替ジャーナリズムの旗手のように思えてきました。
 今世界では、ロシアのプーチンや中国の習近平など、絶対権力を長期間保持できるように国家制度、つまり憲法法律を絶対権力を許す方向で変更し、権力の長期収奪を可能にする目論みが罷り通り、実際に手に入れている傾向にあります。そのような傾向の中で、トランプも再選され続けることを目論んでいましたが、コロナ禍、コロナウィルスのパンデミックによって、形勢がくづれようとしているようにも思います。しかし、トランプが情報を操作し、メディアを手中に治めて、やりたい放題の権力奪取を撮り続けてきたツケは、全世界レベルで膨大に膨れ上がっているように思えてならないのです。
 ジョージ・ブッシュ大統領下のアメリカの間違い、特にイラク戦争の欺瞞を描き出した「華氏911」よりも深刻に、監督自身のモノローグが最後を締めていますが、「アメリカのこれからしか、信じられない」、つまりアメリカはとんでもなく認め難い失敗により、目を背けたくなる混迷の過去を延々と気付き上げてきており、未来にしか望みようがないという、切なる感想には驚かされました。
 映像処理的には、笑えないのですが、トランプの演説が見事にヒットラーの演説映像に嵌っていて、つまり音声はトランプ、映像はヒットラーという映像テクニックが、悲しいほどシンクロしているのです。これには参りました。本当に凄い監督です。これほど、トランプ=ヒットラーをイメージ付けたビジュアルは、過去に見たことがありません。是非、多くの人々に、特に若い世代にみてもらいたいドキュメンタリー映画です。

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