木曜日, 2月 01, 2007

塩野七生著「ローマ人の物語 第14巻 キリストの勝利」

ついに、キリスト教が名実共にローマ帝国の国教となった時代を活写している。もはや、おおらかな言論と行動の時代は去り、他宗教を受け入れず、古代からの神々を排斥していくキリスト教の本質がむき出しになった時代が、3世紀末のローマだったのである。書き進む塩野さんの情念も、ある種の諦観に至ったような雰囲気で書き進んでいる。
 一神教とは他宗教を受け入れない排他性で出来ている。このことをストレートに表現しており、この面では、胸のすく思いだ。そして、近現代にあっては、その排他性を最も具現化しているのが、イスラム教であるとも述べている。また、排他性が具現化するにあたって、その最たる行為が殉教であるとも言っている。
 しかし、ミラノの司教に転じたローマの元高級官僚アンブロシウスにデオドシウス帝が罪の許しを請う場面などでは、「もはや皇帝も一匹の羊になった」と言い切っている。あまりの直裁的な表現に唖然としながらも、書いている塩野さんとて、こんなローマなんか「うそ」であってほしいと願いながらの執筆ではなかったかと想像してしまう。だから、ローマ的な臭いを感じさせるユリアヌスや、皇帝への手紙を通して元老院に安置された勝利の女神像撤去を撤回して貰うために懇願したシンマクスを描くくだりが、妙に印象深く迫ってくるのだ。さて明日からは、最後の1巻「ローマ世界の終焉」を読み解いていこう。

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