文明としての日本論。日本文化というキーワードはたびたび見聞きしてきたのだが、日本に独自の文明があるのかという素朴な疑問を想起するのではないだろうか? 確かに、私自身も「日本文明」という論点を明確には持っていなかった。文化は意識してきたのだが、文明となると、自信がなかった。
しかし、先の安田喜憲氏の著書やこの「美の文明」をつくるを読んで、一気に文化論から文明論へのシフトを余儀なくされている。川勝さんは後半部分で、日本は明治維新期に、日本を世界の中で自律させるには、まずは国民教育であり、それは「国学」でも、「漢学(中国文明)」でもなく、「洋学」にこそ求めるべきだとした約百数十年前の江藤晋平の文部行政指針から抜けだし、いまこそ、地域に根付いた学問体系を導入すべき時期に来ており、それは「洋学」に盲従した学者のそれではなく、例えば、漁師ながらに独学で地域の海の再生に取り組み、「漁師さんの森づくり 森は海の恋人」を著した畠山重篤さんや、やはり大学で建築学を学んでいないのに世界的建築家である安藤忠雄さんのような人たちの独自に打ち立てた体系を、新しい日本の学ぶべき固有の学問として考えていこうと提唱している。
大橋力先生の門下生として、欧米的発想ではない、アジア、日本などに固有の価値体系を大事に、現在的な意味合いを問い直して来た一人として、この川勝氏の提言は、まことに的を得た考え方であった。環境考古学からいまや文明論者でもある安田氏の提唱する「美と慈悲の文明」、川勝氏の提唱する「美の文明」など、一連の熱い文明論を読み進むと、日本人、あるいは、アジアの住人として未曾有の環境時代に、待ったなしの環境問題克服の季節に、大きな勇気となって読者を励ましてくれる。「素晴らしい本物の文明論、いま、ここに咲き誇らん」の感ありである。
マスターは、2019年3月末をもって四日市大学環境情報学部のメディア専攻の教授職を辞しました。科学雑誌Newtonの編集者にしてNY特派員、大学でのメディア教育、これらの経歴を活かしつつ、これからは情報工房伽藍の主催者として、引き続きメディア・ウォッチングを続けます。これからは特に、オンデマンド系について、こだわっていきたいと思います。
木曜日, 11月 23, 2006
川勝平太著「美の文明」をつくる
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