日曜日, 3月 11, 2007

華麗なる同期現象 安田喜憲著「日本よ、森の環境国家たれ」中公業書を読んで

ここ数日、塩野作品を離れて安田喜憲先生の「日本よ、森の環境国家たれ」を読んでいた。欧米型で一神教の文明と多神教で稲作漁労を主体とする文明とを、家畜の民の「動物文明」とし、森の民の「植物文明」と対比して論じる環境論には、いつもの事ながら、明解さとその科学性豊かな説得力に胸のすく思いだ。
 そんな中、3日前の夜、これも久しぶりに宮崎アニメ「天空の城ラピュタ」と「もののけ姫」を勉強していた。特に、「もののけ姫」の主題は、まさに安田文明史観と同じじゃないかと、驚嘆してしまった。自然を侵略し、自然を人間の従属下に置こうとする勢力と自然に畏敬の念を持ちつつ神々の怒りを鎮めようとするアシタカたちの対比は、動物文明と植物文明の対決の構図を見事に踏襲しているように思えてならないのだ。安田先生は「もののけ姫」をごらんになっておられるのだろうか? もしご存じであるならば、是非、感想を聞いてみたいものだ。確かに、安田先生は不死鳥にまつわる先見性ということで、手塚治虫作品「火の鳥」に言及されていたことは覚えているが、宮崎作品についても書いてもらいたいものだ。
 そんな感想を持ちつつ読み進めていたところ、ケーブル・テレビのヒストリーチャネルでNHK番組「その時歴史が動いた」の再放送が流れていた。南方熊楠の神社合祀令反対運動についてのものだった。エコロジーという共生社会の発想を日本で始めて知らしめたのが、この反対運動を通してのことだったことを知り、唖然とした。いまからすでに百年前に、エコロギーというキーワードを使って、鎮守の森のご神木を伐採し、山を裸にしていくことの危険性を説きまくったその姿は、何故か、安田先生や大橋力先生の姿と重なって見えてしまったのだ。
(※2004年7月放送の「その時歴史が動いた」 世界遺産 熊野の森を守れ 〜南方熊楠・日本初の自然保護運動〜)
 ここまで来ると、私の周辺で見聞きすることが、何か、華麗な同期現象に包まれているように思えてしまう。アニメの勉強でさえ、環境問題の一つの事例研究になってしまうわけだから。こういう日々を過ごせるいまの情報環境の素晴らしさに感謝したい。

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